本論は、日本語の文法に見られる個々の事実が何を意味するのか、それらの事実の背後にどのようなシステムがあるのかを見つけ出すことを目的とする。本論では、大きく分けて二つの問題を扱う。一つは、日本語の接続表現の違いとモダリティとの関係である。もう一つは、ノダ、ワケダという、先行研究では「説明のモダリティ」などと言われるものである。
日本語にはたくさんの接続表現がある。これまで、さまざまな接続表現について、類似の表現との用法の違いを比べるというタイプの研究、すなわち、個別的な研究は多くあった。しかしながら、南(1974)などの例外を除くと、日本語の接続表現全体に関係するようなシステムを述べる、組織的、包括的な論考はあまりなかった。本論は接続表現の使い分けに、システマティックな原理があることを示す。
また、ノダ、ワケダについても、どのような用法があるか、といった事例を述べる報告は数多あった。それにもかかわらず、ノダ、ワケダの出現にどのような原理があるのかを包括的に述べた論考はなかったと言える。本論では、これらの問題について統一的な原理を提案する。具体的には、ノダ、ワケダの用法は人間の「思考プロセス」にかかわっていることを示す。
(まえがきより)
ISBN:978-4-87424-295-7 (4-87424-295-2) C3081 |
にほんごのせつぶんのれんせつともだりてぃ 日本語の節・文の連接とモダリティ |
定価(税込) : ¥3,630 |
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著作者よみ : | つのだみえ |
著者名 : | 角田三枝 著【著書を検索】 | |
出版社 : |
くろしお出版
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発売日 : | 2004年6月1日 | |
ジャンル : | 文法 | |
判型A5/234頁 |
目次
第1章 本書のねらい、構成、意義第2章 節の連接とモダリティ
2. 1 この章のねらい、構成、意義
2. 2 先行研究
2. 2. 1 一般言語学における先行研究
2. 2. 2 日本語研究における先行研究
2. 3 節の連接における本論の提案とその分析
2. 3. 1 五つのレベル
2. 3. 2 中右の三つの「領域」およびSweetserの三つのdomainsと本論との比較
2. 3. 3 従属節の述部の構造とモダリティの関係
2. 4 本論で扱う接続表現について
2. 5 従属節と主節の連接における制限
2. 6 原因・理由を表す接続表現
2. 6. 1 タメ(ニ)
2. 6. 2 ノデ
2. 6. 3 カラ
2. 7 逆接を表す接続表現
2. 7. 1 ナガラ
2. 7. 2 ニモカカワラズ
2. 7. 3 ノニ
2. 7. 4 ガ・ケレド
2. 8 条件を表す接続表現
2. 8. 1 ト
2. 8. 2 バ
2. 8. 3 タラ
2. 8. 4 ナラ
2. 8. 5 仮定か前提かによる細かい使い分け
2. 9 従属節の述部の形態
2. 10 まとめ
第3章 ノダの思考プロセス
3. 1 ねらい
3. 2 先行研究
3. 3 ノダの思考プロセス
3. 4 ノダのサイクルの実現
3. 4. 1 物体の認識
3. 4. 2 現象の認識
3. 4. 3 言語の認識
3. 4. 4 判断内容に基づくさらなる判断
3. 4. 5 ノダのサイクルのまとめ
3. 4. 6 プロトタイプ
3. 4. 7 小説の中などで:参加者の重層性
3. 5 ノダのサイクルとノダの用法――先行研究との比較
3. 5. 1 先行研究の検討:益岡(2001b)の分類
3. 5. 2 先行研究の検討:奥田(1990)の分類
3. 5. 3 ノダを単独で用いる場合
3. 5. 4 感情表現について
3. 5. 5 談話の中で、ノダが突然出てくるように見える現象
3. 5. 6 ノダが従属節に現れる用法――カラとノダカラ
3. 5. 7 郵便局に行くんですか
3. 5. 8 先行研究との比較のまとめ
3. 6 談話レベルの用法――ノダの思考プロセスのメタファー
3. 7 名詞+ダあるいは名詞+ナノダ
3. 8 ノダ文を使いにくい場合
3. 9 一般言語学的な意義―文法研究方法への提案
3. 10 結論
第4章 ワケダ、ワケデハナイ
4. 1 ねらい
4. 2 先行研究
4. 3 本論の考えと分析
4. 4 ワケダの環およびワケダとノダの射程の幅
4. 4. 1 ワケダの二つのタイプとノダの関係
4. 4. 2 引用形を含むかどうか
4. 5 ワケナノダ
4. 6 メタファー用法:納得、驚きを表す用法
4. 7 談話的効果のまとめ
4. 8 推論を含むかどうか
4. 9 結論
第5章 節の連接と思考プロセス
5. 1 はじめに
5. 2 「事態間レベル」:ノデとカラ
5. 2. 1 「事態間レベル」:ノデを用いる場合
5. 2. 2 「事態間レベル」:カラを用いる場合
5. 2. 3 「事態間レベル」:ノデとカラとノダの思考プロセス
5. 3 IV「判断の根拠」:カラとノダカラ
5. 3. 1 IV「判断の根拠」:カラを用いる場合
5. 3. 2 IV「判断の根拠」:ノダカラを用いる場合
5. 3. 3 IV「判断の根拠」:カラとノダカラとノダのサイクル
5. 4 V「発話行為の前提」:カラとノダカラ
5. 4. 1 独自のモダリティを表すノダカラ
5. 4. 2 ノダカラ節の独立性とモダリティ
5. 5 結論
著者略歴
東京生まれ。『日本語クラスの異文化理解:日本語教育の新たな視点』(くろしお出版2001)
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