本書は「複文」をめぐって考察しようとするものであるが、それにはまず、本書で考えている「複文」の概念を画定しておくことが要求されよう。
「複文」は「単文」と対立する文法概念である。「単文」とは、単一の述語を中心にして組み立てられる文のことである。これに対して、「複文」とは述語を中心として組み立てられる構造体が複数個存在する文、すなわち、述語を中心としたまとまりが2つ以上集まって構成された文のことである。(中略)
本書では、従属節の類型として、「名詞節」、「連体節」、「連用節」、「並列節」の4つを認めることにする。本書の第1部では、これら4種類の従属節を土台に置いて考察を試みたい。次に、本書の第2部では、「従属節と文の概念レベル」という標題の下に分析がなされる。(序章より)
ISBN:978-4-87424-139-4 (4-87424-139-5) C3081 |
ふくぶん 新日本語文法選書2 複文 |
定価(税込) : ¥3,300 |
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著作者よみ : | ますおかたかし |
著者名 : | 益岡隆志 著【著書を検索】 | |
出版社 : |
くろしお出版
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発売日 : | 1997年5月24日 (2008年9月8日 第2刷 発行) | |
ジャンル : | 講座[一般向け] | |
判型A5/218頁 |
目次
序章 複文とは何か第1部 従属節の類型
第1章 従属節の類型
第2章 名詞節におけるコトとノ
1 はじめに
2 コトとノ
3 コトがノに代わらない場合
4 ノがコトに代わらない場合
5 おわりに
第3章 連体節の接続形式−内容節を中心に−
1 はじめに
2 名詞修飾の表現
3 接続形式の基本型と特殊型
4 基本型内容節とトイウ内容節
5 接続形式「との」
6 文の概念レベルと内容節の接続形式
7 おわりに
第4章 条件文の表現
1 はじめに
2 レバ形式とタラ形式の基本的特徴
3 レバ形式の用法の拡張
4 ナラ形式
5 ト形式
6 おわりに
第5章 並列節におけるナクテとナイデ
1 はじめに
2 ナイデの有標性
3 並列節におけるナクテとナイデの用法
4 付帯状況の意味の拡張
5 おわりに
第2部 従属節と文の概念レベル
第1章 文の概念レベル
1 はじめに
2 4つの概念レベル
3 従属節と文の概念レベル
4 文の概念レベルに関する先行研究
5 ガ格のレベル
6 おわりに
第2章 不定性と文の概念レベル
1 はじめに
2 真偽判断のモダリティ
3 真偽疑問表現と疑問語疑問表現
4 選択疑問表現
5 カのレベルとスコープ
6 おわりに
第3章 条件表現と文の概念レベル
1 はじめに
2 「〜ば」の形式の分化
3 文の概念レベル
4 文の概念レベルの条件節への投影
5 条件表現と文の概念レベルの関わりに関する先行研究
6 おわりに
第4章 原因・理由節と文の概念レベル
1 はじめに
2 タメニ節
3 カラ節
4 ノデ節
5 おわりに
第5章 内容節と文の概念レベル
1 はじめに
2 命題レベルの内容節とモダリティレベルの内容節
3 名詞の限定表現としての基本型内容節
4 トノ内容節
5 主観的表現
6 おわりに
第3部 従属節の従属度
第1章 時の特定、時の設定
1 はじめに
2 時間節における格助詞の有無
3 時の特定と時の設定
4 情報の焦点とスコープ
5 原因節における格成分と状況成分
6 おわりに
第2章 複文における疑問のスコープ
1 はじめに
2 連用節・並列節と疑問のスコープ
3 疑問のスコープを決定するもの
4 連体節・名詞節と疑問のスコープ
5 おわりに
補 説
第1章 連体節の表現と主名詞の主題性
1 はじめに
2 情報付加の機能
3 情報付加ならざるもの
4 情報付加型連体節の表現における有題的述定の性格
5 連体節表現と「主題−解説」構造
6 おわりに
第2章 日本語の補助動詞構文−構文の意味の研究に向けて−
1 はじめに
2 構文の内的連関−テイク・テクル構文の場合−
3 構文間の外的連関
4 おわりに
著者略歴
益岡隆志 (ますおか・たかし)岡山市生まれ。現在、神戸市外国語大学教授、日本語文法学会会長(2009年現在)
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