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ISBN:978-4-7576-0979-2 C3381

かんさいほうげんにおけるたいぐうひょうげんのしょそう

研究叢書530 関西方言における待遇表現の諸相

定価(税込) : ¥8,250
表紙 著作者よみ : むらなかとしこ 
著者名 : 村中淑子 著著書を検索
出版社 : 和泉書院 近刊を見る】【新刊を見る】 【出版社web
発売日 : 2021年1月15日
ジャンル : 社会言語学・方言
判型A5/320頁
本書は、関西方言における待遇表現の助動詞類に関する分析である。待遇表現ハル・ヤル、テ敬語、卑罵表現クサル・テケツカル・ヨルなどの使われ方を、小説を用いて分析した。さらに、関西方言話者になじみのあるマッシャロカ・デンネンのような語形、すなわち対者待遇の助動詞デス・マスを含んだ方言複合形を「デスマス転訛形」と名付け、インタビュー調査、談話資料、国会会議資料、小説を用いて考察し、複合形研究の必要性を主張した。
出発点は、「現実の言語」にできる限り近づいて実際のセンテンスの使用を知りたい、という考えであった。「現実の言語」に近付くため、具体的な文脈における言語使用をこまやかに観察する必要が生じるが、小説を用いることにより、それが可能になるとした。またセンテンスとしての使用を見ることは、複合形を切り分けずに扱うことにつながった。抽象度の高すぎない、現実に即した、ゆるやかな規則を見つけることに、価値を見出そうとした。

目次

第1部 待遇表現研究のための視点
第1章 はじめに:本書の目的と構成
1 関西方言の待遇表現研究について
2 本書における観点
3 本書の構成
第2章 小説を用いた方言研究手法について
1 方言の実態の調べ方と材料について
2 話しことばの実態を調べる材料の階層性
3 小説データが実態を反映しないことについて
4 よくできた小説には他のデータにない利点がある
第3章 複合形研究の必要性について
1 複合形は今まであまり研究対象とされていない
2 複合形を研究するべき理由
第4章 待遇表現の捉え方を再考する
1 加藤正信(1973)の指摘の読み替え
2 文脈の重要性と方法論とのつながり

第2部 小説にみる待遇の助動詞―単独形の研究―
第5章 京都における待遇の助動詞類
1 はじめに
2 明治期の小説「心の鬼」について
3 「心の鬼」の待遇表現
4 まとめ
5 おわりに:ハルの出現
第6章 大阪におけるテ敬語
1 はじめに
2 近世と現代のテ敬語概観
3 青空文庫パッケージの使用
4 上司・水上・織田のテ敬語と東京方面の状況
5 まとめ:大正期から昭和初期にかけてのテ敬語
第7章 大阪の待遇の助動詞ヤルについて 
1 はじめに
2 先行研究におけるヤル
3 談話資料および小説資料におけるヤル
4 ヤルの使用を制限する条件についての仮説
5 おわりに
第8章 大阪における罵りの助動詞類
1 はじめに
2 ヤガル・クサル・サラス・テケツカルなどについて
3 「穴さがし心の内そと」の罵り表現
4 どんな人物がどのように罵り表現を使ったか
5 まとめ
第9章 大阪方言におけるナサル・ナハル・ハル等の変遷―小説資料と落語資料の違い―
1 はじめに
2 待遇の助動詞ハルの成り立ちについて
3 用いた資料について:幕末から昭和にかけて
4 語形の探索方法
5 ナサル・ナハル・ヤハル・ハルの出現状況について
6 変遷のまとめ
7 おわりに:資料の扱いについて
第10章 小説を使った待遇表現研究について
1 第5章から第9章までの各章をふりかえる
2 「低め安定」の方言語形調べに向けて

第3部 デスマス転訛形について―複合形の研究―
第11章 「デスマス転訛形」とは
1 デッシャロ・マンネンへの名づけ
2 先行研究における記述・言及
3 デスマス転訛形の使用層と形態的特徴について
第12章 デスマス転訛形の発生について
1 はじめに
2 現代における関西方言のデスマス転訛形について
3 洒落本・戯作・小説・落語を調べる
4 近世から明治期にかけての状況
5 デスマス転訛形の発生メカニズムについて
6 おわりに
第13章 現代におけるデスマス転訛形―インタビュー調査から―
1 「ことばの加齢変化」科研について
2 インタビュー調査の方法
3 デスマス転訛形と非転訛形についての使用意識
4 まとめ
第14章 大阪市談話資料におけるデスマス転訛形
1 はじめに
2 『NHK全国方言資料 第4巻近畿編』「大阪府大阪市」を調べる
3 「転訛形」出現率と語形・転訛タイプ・場面差など
4 「転訛」の生じやすさについて
【資料】『NHK全国方言資料』「大阪市」におけるデスマス転訛形・非転訛形 一覧
第15章 国会会議録資料におけるデスマス転訛形
1 公的場面における関西方言使用
2 国会会議録と関西方言
3 『国会会議録』パッケージを用いる
4 国会で誰がどのくらいデスマス転訛形を使ったか
5 関西出身かどうか、引用の形にするかどうか
6 まとめ
第16章 小説にみるデスマス転訛形 その1―織田作之助作品―
1 はじめに
2 デスマス転訛形について
3 織田作之助と「わが町」について
4 調べた方法
5 デスマス率と転訛率
6 デスマス転訛形の位相差
第17章 小説にみるデスマス転訛形 その2―田辺聖子作品―
1 デスマス転訛形は中高年男性語か?
2 田辺聖子の長編小説を調べる
3 デスマス転訛形とデスマス非転訛形の出現
4 人物のさまざまな属性や場面との関連
5 まとめ
第18章 デスマス転訛形研究の意義
1 第11章から第17章までの各章をふりかえる
2 「ことばの調整」を見出す

第4部 関西方言における待遇表現研究の基盤と未来
第19章 待遇表現研究と「ことばの調整」という捉え方の提案
1 文脈に即した観察の重要性と「ことばの調整」
2 「ことばの調整」と配慮・配慮表現との違い
3 「ことばの調整」と関わるキーワード
4 おわりに

参考文献一覧
初出一覧
索引(語彙・人名・事項)
あとがき

著者略歴

1962年生。京都市出身。
大阪大学法学部卒業。大阪大学大学院文学研究科博士前期課程修了、同後期課程単位取得退学。社会言語学・方言学を専攻。
徳島大学総合科学部講師、同助教授、姫路獨協大学外国語学部助教授、同教授を経て、現在、桃山学院大学国際教養学部教授。
〈主な論文・著書〉
「公的場面における関西方言について―国会でなぜコテコテの関西方言が使われるのか―」『社会言語科学』20巻1号(社会言語科学会2017)、「織田作之助作品にみるデス・マス等の転訛形の位相差について―「わが町」の世界―」『表現研究』111号(表現学会2020)。項目執筆 に真田信治監修『関西弁事典』(ひつじ書房2018)、分担執筆に真田信治編『社会言語学の展望』(くろしお出版2006)。

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